半田市、常滑市、知多市で弁護士をお探しなら弁護士法人半田みなと法律事務所「お知らせ・コラム」ページ

MENU CLOSE

お知らせ・コラム

Column

カテゴリ

Category
2022.12.29 遺産相続・成年後見

相続開始後に行う手続き【預貯金の引き出しと老齢年金】

相続開始後に行う手続き【預貯金の引き出しと老齢年金】

相続開始後に行う手続について、今回は預貯金の引き出しと老齢年金についてご説明いたします。

預貯金の引き出し

平成30年の相続法改正で、それぞれの相続人が遺産に属する預貯金債権のうち一定割合部分は単独で払い戻しが認められることになりました。これまでは、遺産分割前に相続人が被相続人の預金を引き出すことができないため、被相続人が入院したまま亡くなってしまい、亡くなるまでの入院費や葬儀費用などの支払いが必要な場合、これらの支払いを相続人が自分の金銭を支出して支払ったり、亡くなった直後にATMからまとまった額を被相続人の預金から引き出したりして支払っていました。この遺産分割前の払い戻し制度の創設で、家庭裁判所の判断を受けることなく、相続人単独で金融機関に赴いて、被相続人の預貯金から一定限度額の引き出しができるようになりました。

遺産分割前の払い戻し制度

①家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払い戻しを認める方策

家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払い戻しを認める方策では、共同相続人の一人が単独で金融機関から被相続人の預貯金を引き出すことができます。ただ、この制度はあくまでも相続人が当面の生活費や葬儀費用の支払いに困ることがないようにするためのもので、引き出せる金額には上限があります。

②家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策

家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払い戻しを認める方策では、遺産の分割の審判または調停の申立てが有った場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を行使する必要があると認めるときは、他の共同相続人の利益を害しない限り、申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部または一部を仮に取得することができます。

この制度によって引き出された預貯金も遺産として遺産分割の対象となり、この分割に際しては、引き出した預貯金分はその権利を行使した相続人が既に受け取ったものとされます。

老齢年金

年金制度との関係でも、年金受給者や被保険者が死亡した場合は、死亡の届出をする必要があります。年金関係での死亡届出と、戸籍上の死亡届とは制度上別のものですが、死亡から7日以内に同居の親族ら届出義務者が、市町村役場に戸籍法で規定する死亡の届出をしていれば、年金関係での死亡届は省略できます。

年金を受給している者が亡くなった場合

死亡届に加えて、未支給年金の請求の手続きが伴うこともあります。年金の給付は、毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月の6期に、それぞれの前月までの分を支払います。そのため、年金を受給している者が亡くなった場合、亡くなった当月以前の年金は、受け取ることができず、亡くなるとおのずと受給できていない年金が発生することになり、これを「未支給年金」と言います。

年金給付の受給権者が死亡した場合

その死亡した者に支給されるべき年金給付がまだ支給されていないときは、その者の①配偶者、②子、③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹、または⑦①〜⑥以外の者で三親等以内の親族であって、その者の死亡当時その者と生計を同じくしていた者は、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができます。老齢基礎年金、老齢厚生年金の未支給年金の場合は、未支給年金の受給権者となった者が、最寄りの年金事務所に「未支給年金請求書」を提出して請求を行います。また、未支給年金請求書を提出するときには、亡くなった者の死亡が記載された戸籍謄本や、請求する者と亡くなった者との親族関係がわかる戸籍謄本、生計を同じくしていたことがわかる書類として住民票などを提出します。

未支給年金

亡くなった者が生前に受け取るべきだった年金を、その相続開始後に、遺族が請求することによって受け取るものですが、この未支給年金は、相続財産ではなく、受け取った遺族の一時所得に該当します。年金法においては、民法上の相続とは別の立場から一定の遺族に対して未支給年金の受給権者を定め、未支給年金の給付を認めており、未支給年金は、遺産分割との関係でも、相続税課税との関係でも、亡くなった者の相続財産には算入されません。