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Category交通事故の後遺障害認定に必要な検査や資料は?膝の症状ごとに解説
交通事故に遭い、ひざに後遺障害が残った場合には、後遺障害等級認定を受けることで等級に応じた慰謝料や逸失利益などの損害賠償が請求できるようになります。しかし、等級認定を受けるためには医学的な証明や、事故と後遺症との因果関係を証明する必要があるため、簡単に認められるものではありません。認定を受けるためには、どのような資料を提出すると有効か確認しておくことがポイントです。
今回はひざの後遺障害について重点的に解説します。後遺障害とはどんなものか、ひざの後遺障害の症状ごとに適した検査方法や有用な資料などについてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
【目次】
交通事故の後遺障害とは?
後遺障害とは、これ以上治療を継続しても改善が望めない状態(=症状固定)になったときに残存する障害のことを言います。
損害賠償補償法では、「症状固定」後の症状を「後遺障害別等級法」に当てはめて、損害保険料率算出機構あるいはその下部組織の調査事務所が等級認定を行います。
等級認定がなされると、原則としてその認定された等級表に対応する労働能力喪失率が適用され、逸失利益が算定されることになります。
交通事故が原因で起きるひざの怪我の症状と後遺障害等級
ひざに残る症状ごとの後遺障害等級は、以下の通りです。
- 痛みやしびれなどの神経症状の場合:12級13号、14級9号
- 関節の可動域に制限がある場合:12級7号、または10級10号
- 人体の損傷によりひざに動揺性が残る場合:12級、10級、8級
ひざ関節に関する主な傷病名としては、靱帯損傷、半月板損傷、膝蓋骨の骨折や脱臼、脛骨プラトー(高原)骨折などが挙げられます。ひざの場合、同時に複数個所を負傷することが多く、それぞれの損傷が複合して症状が発症していることが通常です。
ひざに関する傷病の症状や検査方法
靱帯損傷
靱帯(じんたい)とは、骨と骨をつなぎ、関節動作の安定性に寄与する役割を担う組織です。靱帯が損傷されると、ひざに緩みが生じてしまい、それが関節運動にさまざまな影響を与えます。
傷病名については、受傷当初はひざの痛みについて主治医が「膝関節打撲」「膝関節捻挫」としていることが多くあります。しかし、時間の経過とともに症状が軽快せず、膝関節痛を継続的に訴えるので、MRI撮影をしたところ、ようやく靱帯損傷が判明した、という経過が多いです。
①前十字靱帯損傷
前十字靭帯損傷の損傷を明らかにする検査としては、MRIやラックマンテストがあり、症状裏付けのために有効です。ラックマンテストは靱帯特有の検査で、片手で大腿骨を押さえ、もう一方で脛骨近位後方をつかみ、脛骨を前方に引き出すテストのことです。
また、ストレスレントゲン(ストレスXP)も有用です。徒手や器具により膝関節に圧力をかけて骨同士のずれを確認するストレスXPテストは、靱帯が損傷していることで生じる関節動揺性の判断に必要になります。
ストレスXPテストの動揺の目安は、損傷がなくとも前後方向のストレスによって3mm程度の動揺性があるといわれているので、外傷による損傷が認められるためには、これ以上ずれているか確認することが大事です。
② 後十字靭帯損傷
ひざをダッシュボードに打ち付けるケースなどで発症することが多いです。ただ、後十字靭帯損傷単独での損傷はほとんどなく、骨折や前十字靭帯損傷を伴うことが多いことが特徴です。
後十字靭帯損傷を明らかにする検査としては、MRI、後方引き出しテスト、ストレスXPテストなどがあります。後方引き出しテストでは、脛骨を後方に押し、脛骨が後方に過度に移動するかをチェックします。
③ 側副靭帯損傷
側副靭帯損傷は、靭帯損傷の中で一番多い損傷で、ひざの外側から大きな衝撃がかかったときに生じる損傷のことです。
側副靭帯は内側と外側にありますが、圧倒的に多いのが内側側副靭帯の損傷です。外側側副靭帯だけが損傷するケースはまれで、前十字靭帯損傷と合併する場合が多いことが特徴とされます。
側副靭帯損傷を明らかにする検査としては、MRI、ストレスXPテストがあります。
半月板損傷
半月板(はんげつばん)に何らかの衝撃が加わって、割れたり、切れたりすることにより、関節軟骨を削ったり、骨と骨との間に軟骨組織が引きずり込まれたりすることを半月板損傷といいます。
半月板にはひざのクッションとしての役割や、関節を安定させる役割があります。クッションである半月板を損傷すると、ひざの動きにさまざまな影響を与えるだけでなく、痛みなどを引き起こします。
半月板を損傷した場合の主な症状には、圧痛、ひざのロッキング(動かなくなること)、ギビングウェイ(ひざの力が抜けてひざがカクッとなってしまうこと)、クリック音の発生、関節の腫れ、可動域制限などがあります。
半月板損傷を明らかにする検査には、MRI、マクマレー・テスト、グリンディング・テストなどがあります。
まずは、MRI画像の撮影です。半月板切除術や縫合術をしていれば、半月板について手術適応があった、つまり損傷をしていたということから自賠責保険では半月板損傷と認められやすいです。さらに、治療経過の中で関節鏡視下手術をしているような場合、その手術動画画像も有効な資料となります。切除術がされているのであれば、その部分のクッションはなくなり痛みが生じる裏付けがあるといえるので、後遺障害等級14級にとどまらず12級も認定されるべき障害といえます。
ほかには、仰向けに患者を寝かせ、そのままの体勢でひざを最大限に曲げ、足の底と関節を手で持ち、そのままゆっくりと下腿を外旋・内旋させながら、その際に生じる痛み等を診察する「マクマレー・テスト」、うつ伏せでひざを90度屈曲し、かかとを下に押し付けながら回してその際に生じる痛み等を診察する「グリンディング・テスト」が陽性であることが有効です。
膝蓋骨骨折・脱臼
膝蓋骨は、膝関節の打撲に伴って縦の骨折・粉砕骨折や脱臼が生じることが多く、激痛、腫脹、可動域制限が頻発します。検査としては、単純XP撮影、CT撮影があります。
ギプス固定や手術により膝関節面の正確な整復がなされれば、一般的には症状が残存したとしても後遺障害が認定されることは難しいです。
そこで、まずは主治医に関節面に不整があるかを確認することが重要です。もし、不整がない場合であっても、骨片があるかないか、周囲靱帯のMRI画像における炎症はあるのか、膝軟骨の不整はあるのかなど、痛みが残っていることを説明できる画像を探すといいでしょう。
脛骨プラトー骨折
脛骨(けいこつ)の関節面を「プラトー」といい、その部分の骨折をプラトー骨折といいます。脛骨高原骨折と表記されている場合もありますが、正式名称は、脛骨近位端骨折です。
膝関節内の骨折であり、膝に衝撃が加わった際に多く発症することから、半月板損傷や靭帯損傷を合併することが少なくないとされています。
骨折の検査としては、単純XP撮影、CT撮影があり、周辺軟部組織損傷の検査としては、MRI撮影があります。神経症状の等級も含めて、基本的には12級以上の等級が見込まれると考えていいですが、そのための症状裏付けのために、画像で関節面の不整、靭帯損傷、半月板損傷を確認するべきでしょう。
交通事故によるひざの後遺障害等級認定は弁護士にご相談を
交通事故に遭い後遺障害が残った場合には、等級認定を受けることで後遺障害慰謝料や逸失利益が請求できるようになり、受け取れる賠償金が大幅に増える可能性があります。ただし、交通事故の後遺障害等級認定の認定率は低く、簡単ではありません。
事故と後遺症との因果関係を証明するためにはどのような医学的な資料が必要となるのかはケースによっても異なるため、交通事故の後遺症でお悩みであれば、まずは半田みなと法律事務所へご相談ください。当事務所にご相談いただいた結果、後遺障害が非該当であったところから認定を受けることができ、総額480万円を獲得できたケースもございます。詳しくは解決事例をご覧ください。
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