半田市、常滑市、知多市で弁護士をお探しなら弁護士法人半田みなと法律事務所「お知らせ・コラム」ページ

MENU CLOSE

お知らせ・コラム

Column

カテゴリ

Category
2023.05.11 離婚・男女問題

家族経営における離婚

家族経営における離婚

家族経営とは

家族経営とは、ファミリービジネスを営んでいるファミリーが、そのファミリーの責任者(ビジネスの所有者)の引退後もファミリービジネスを維持・発展させるために構築すべき統治構造のことを言います。(ファミリービジネス:創業者や創業者の親族など、いわゆる創業家が中心となって経営している事業のことをいいます。同族企業、オーナー系企業、家族経営と呼ばれることもあります。)

ファミリービジネスは、ビジネスの文脈にとどまらず、広くファミリーとしての共同体を営む上で設計し、運用していくことに意義があります。家族経営の機能は、広くファミリーの発展のためにファミリー内の意見の違いや利害関係を調整することにあり、究極的には自分自身の資産を保全・防衛するための仕組みとなります。

今回は、家族経営で注意すべき個別事項を解説いたします。

①ファミリー関係領域内の調整

ファミリーとしての充実度

ファミリーとはいえ、個性のある人間同士の結合体で、価値観が完全に一致することはありません。些細なずれが、修復しがたい亀裂を生むこともあります。これは、心身の健康だけでなく、事業・資産にも影響を及ぼすものであり、ファミリーとして幸福で充実するために必要な調整をしておくことは公私両面においてもとても有益なことです。こうした調整は、仕事やお金の使い方、家事育児のあり方、教育観など配偶者や子との間の価値観の調整の必要性や具体的な解決策を検討する必要がある場合が多いです。

夫婦関係(配偶者との関係)

子や親戚とは異なり、配偶者とは出会うまでは全く別の人生を歩んできた者です。そうした配偶者と結婚し家族になることには、子との関係よりも個別に調整しなければならない事項が多くなるものです。関係を解消することのできない実親子関係とは異なり、夫婦関係は離婚という形でその関係が解消されることもあり、経済的な側面からは財産分与等の問題を抱えます。また、配偶者が、ファミリービジネスの従業員であったり、株主であったりと、ビジネスに関与している場合もあり、そもそも関与すべきかを事前に検討する必要もあります。こうした手当として、婚前契約、夫婦財産契約が重要な役割を担います。

家族形成

家族関係は、夫婦関係、実親子関係、養子縁組を形成することによってなり、これらの連なりによって一族としてのファミリーを形成していきます。養子縁組は、相続税対策の一環として用いられることがありますが、それによってファミリー内に軋轢を生むことはないか、ファミリービジネスに影響はないかの確認・検討が必要です。

プライベート資産の管理・運用

ビジネス関係以外のプライベートなファミリー資産について、これが散逸・減少・毀損しないように管理し、適切に運用していくことも重要です。

プライベート資産の承継・相続

日本では、資産承継に関する税制が厳しくなる一方ですので、税対策を含めた適切な資産承継計画を早い段階から講じておく必要があります。対策を怠ると、資産の多くが税金に消えていくことになります。資産承継を成功させるためには、どのような財産を相続させるかを、相続開始(死亡時)より20年以上前に決定し、相続人ごとの相続税の分析を長期にわたり継続する必要があります。日本人男性平均寿命が82歳ですので60歳ごろには資産承継計画を進めるべきです。

②オーナーシップ関係領域内の調整

事業継承計画

経営者の交代とともにステークホルダーとのパワーバランスが変化していきます。その中で、創業者・創業家の理念の維持と承継、組織変革、後継者育成、オーナーシップの検討など様々な対応が必要になります。事業承継計画は、事業存続のリスク、相続人間の争いのリスク、納税のリスクを踏まえて、無理のない内容にすることが必要です。基本方針の策定に当たっては、事業の概況、後継者候補の状況、自社株評価といった会社の現状分析、親族内承継など、多岐にわたる事項が検討対象です。また、一度決めた計画も、事業・経済・家族状況の変化や、法令改正に対応することが必要であり、定期的な点検と見直しを行います。特に、自社株の評価額の変動は定期的な確認が肝要です。

株主間契約・種類株・定款

ファミリービジネスの観点からまず対策すべき事項が、株式の散逸防止です。最近では、監視を効かせてガバナンスを実効化する観点から、あえて自社株を特定の一人に集中させず、他の相続人も積極的に一部保有させる場合があります。こうしたとき、第一次承継者(例えば子)の段階では特に株式の散逸は懸念されないですが、第二次(例えば孫)、第三次(例えばひ孫)と相続が続くにつれ、株式がどんどん分散していきます。こうした分散は、ファミリーガバナンスを不安定にするため、避けるべきです。そこで、こうした事態に備えて、例えば後継者以外の株主については、その者の死後は株式を特定の者に譲渡するという取り決めをすることによって、株式散逸を防止することができます。

③ビジネス関係領域内の調整

事業への参画や雇用のあり方について、ファミリーゆえの問題が生じることがあります。

例えば、ファミリーを雇用契約にてビジネスの関与させる場合、ファミリーとしての関係が円満な状態が続けば良いですが、ビジネスとはかかわりのない純粋にファミリーの領域でその関係に亀裂が生じる場合があります。こうしたとき、それを理由として雇用契約を一方的に解消させることは通常できません。もちろん会社は、労務の提供の受領拒否をすることで、ビジネスに関与させないことはできます。しかし、その場合には会社側の労務受領拒否ということで、働いていないにもかかわらず賃金を出し続けなければならなくなります。こうした形でファミリーとの関係から労務トラブルにまで発展することがあるため、トラブルに備えた関与形態や条件にしておくことが望ましいです。

ァミリーの問題は家庭より様々で、その内容もときにはセンシティブなものであるため、容易に他人に相談できない場合もあります。しかし、限られた時間の中で孤独に対処しようとしても、十分な効果は見込めません。弁護士を交えて慎重にあるべき姿を検討することが望ましいといえます。是非、半田みなと法律事務所へご相談くださいませ。