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2023.03.03 遺産相続・成年後見

遺産相続 寄与分と特別受益

遺産相続 寄与分と特別受益

遺産相続、寄与分と特別受益について、解説いたします。

寄与分

寄与分とは、共同相続人中に、①「被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付」、②「被相続人の療養看護」、③「その他の方法」により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をしたものがあるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価格から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、民法での規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもって、その者の相続分とすることをいいます。

①「被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付」について

これは、相続人が被相続人によって経営される農園や自営業に無償で参加し、相続財産の維持、形成に寄与する場合です。ただ労務を提供すればいいとういうものではなく、財産上の効果のない寄与は含まれないという点に注意が必要です。寄与分を主張するためには、どのようにして財産維持に寄与したのか、どんな労務の提供や財産の給付をしてそれに貢献したのかを具体的に明らかにする必要があります。

②「被相続人の療養看護」について

親の生活の世話をする場合、親の看護をした場合、相続人の1人がそのための費用を負担する場合などが考えられます。親が亡くなってから他の相続人と平等に遺産を分割するとなると、親の生活の世話をした相続人からすれば、不公平に感じる場合もあり、民法では寄与分をいう制度を設けています。ただ生活の世話や療養看護をすればいいというものではありません。財産上の効果のない寄与、あるいは特別ではない寄与は、遺産分割において考慮される寄与分には含まれません。

③「その他の方法」について

これには、被相続人の財産を維持・増加させる行為が広く含まれ、家業に関係のない財産上の給付もこれに含まれます。典型的なのは、被相続人の事業とは無関係に、相続人が自ら取得した所得ないしは財産を提供し、相続財産の増加に寄与する場合です。

特別受益

特別受益とは、特定の相続人が遺贈や生前贈与により被相続人から受けた特別な利益のことをいいます。共同相続人中に、被相続人から、①遺贈を受け、または②婚姻もしくは養子縁組のためもしくは③生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、民法の規定により算定した相続分の中からその遺贈または贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とすると規定されています。

◆遺贈

遺贈を受けた場合は、民法に明記されている通り特別受益となります。

◆婚姻の費用

持参金(嫁入りの際に新婦が用意するお金)や支度金(結納の代わりに新郎の親が新婦の親に渡すお金)、嫁入り道具の費用、結納金などの婚姻の費用は、ある程度まとまったお金を贈与されているので、一般的に特別受益に該当します。また、挙式費用については、多額ですが特別受益に含まれないという考えが一般的です。

◆留学費用

規定上は特に挙げられていませんが、普通教育以上の学資は、その本人にとって就職先やそれによる所得に影響が出ることなどから、③「生活の資本としての贈与」に該当する可能性があります。

◆自宅の贈与

自宅を譲り受ければ、その自宅は生計の基礎として役立つので、その自宅の贈与は通常は「生計の資本としての贈与」に該当し、特別受益に該当することになります。

◆親との同居

親が子を扶養することは、直系血族間の扶養義務として当然のことで、通常は特別受益には該当しません。小遣いをもらっていたとしても、社会通念上相当といわれる金額であれば、これも扶養義務の一環として、特別受益には該当しません。ただし、職に就かずに親に頼りきった生活を続けていたなどの特殊事情がある場合には、その生活費相当額が特別受益に該当する可能性もあります。

◆生命保険金

ほとんどの場合、相続財産ではなく、相続人個人の固有の財産になるとされていて、相続人の1人が受け取った生命保険は、遺産分割協議の対象とはなりません。生命保険が相続財産ではないとしても、被相続人の生命保険金を、相続人の誰か1人が相続した場合、他の相続人からすれば、その生命保険という相続財産を受領した相続人に比べて不公平な取り扱いを受けたと思ってしまいます。つまり、被相続人の①遺贈にも②③生前贈与にも当たらないので、生命保険金を民法が予定する特別受益そのものとして評価することはできません。

◆死亡退職金

相続財産ではなく相続人の固有財産として評価されるのが通常です。死亡退職金が相続財産に該当しないとしても、死亡退職金を受け取った相続人をそうでない相続人の間で不公平が生じてしまいます。被相続人の生前贈与にも遺贈にも当たらないと考えるのが素直な解釈ですので、死亡退職金を民法が予定する特別受益と考えることはできないでしょう。

半田みなと法律事務所では、遺産相続のご相談をお受けしております。初回のご相談60分5500円とご負担はございますが、お気軽にご連絡くださいませ。