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2020.10.09 遺産相続・成年後見

相続の欠格と廃除

相続の欠格と廃除

相続欠格

本来相続人となるべき者に一定の不正事由があった場合に、法律上当然に相続権が剥奪され、相続資格を失うことをいいます。

民法により、次の5つの相続欠格の事由が定められています。

①故意に被相続人又は先順位若しくは同順位の相続人を殺し又は殺そうとしたために、刑に処された者(過失致死や傷害致死は含まれません。刑に処されたことが要件となるので、正当防衛や責任能力のために処罰されなかった者は除外されます。) ②被相続人が殺害されたことを知っていながら告訴・告発しなかった者(ただし、その不正行為の判断ができない者や、殺害者が自分の配偶者・直系血族であった場合は除外されます。) ③詐欺・脅迫によって被相続人の遺言の作成・取り消し・変更を妨げた者 ④詐欺・脅迫により被相続人に相続に関する遺言を作成させ、又はその取り消し・変更をさせた者 ⑤相続に関する被相続人の遺言を偽造・変造・破棄・隠匿(いんとく)した者(相続人が被相続人の遺言書を破棄・隠匿した行為が相続に関して不当な利益を目的としたものでなかったときは、その者は相続欠格者にはなりません。)

相続人が欠格事由に該当する行為をしたときは、何らかの手続きをとるまでもなく、法律上当然に相続権を失うことになります。また、相続欠格者は受遺者(じゅいしゃ)(遺贈を受ける者)にもなれません。欠格事由が相続開始後に生じた場合は、欠格の効果は相続開始時に遡り、その場合、欠格者の子が代襲(だいしゅう)相続人になります。 欠格事由に該当すると手続きをするまでもなく相続権を失いますが、不動産登記には、手続きが必要になります。相続欠格者が自ら作成した、欠格事由がある旨の証明書(印鑑証明添付)や、相続欠格者であることを証する判決の謄本などを、相続登記の申請時に提出します。 また、欠格の効果は相対的であり、欠格者は欠格事由と関係ある特定の被相続人に対する関係で相続資格を失うにとどまり、他の者の相続人になることはできます。例えば、父を殺害した子は、父の相続人にはなれませんが、自分の配偶者や子どもの相続人になることはできます。

相続人の廃除

遺留分(相続遺産の最低限の取り分)を有する推定相続人が被相続人に対して、虐待したり、重大な侮辱を加えたとき、又はその他著しい非行をしたときに、被相続人の意思感情を尊重し、被相続人の請求に基づいて、家庭裁判所が審判によって相続権を剝奪する制度のことをいいます。
廃除は、相続人資格を剥奪する強力な制度ですので、家庭裁判所も廃除事由の該当性を慎重に判断します。廃除事由に当たると判断されるには、具体的状況を考慮して、社会的・客観的に相続権(遺留分)を剥奪することが正当とされるようなものでなければならないとされています。例えば、相続人の非行が一時の激情にかられたものである場合や、その非行が被相続人の態度・性格等にも起因するような場合には、廃除事由に当たらないとした裁判例があります。

廃除の方法には、「生前廃除の申立て」と「遺言による廃除の申立」があります。

前者は、被相続人が生前に行うものであり、立証の一番の証拠が被相続人自身であるため、遺言によるものに比べ、廃除事由の立証が容易であるという利点があります。後者は、被相続人の死亡後、遺言執行者は、遅滞なく家庭裁判所に廃除の請求をしなければなりません。遺言による廃除の場合には、その申立時点には被相続人は死亡しているため、廃除事由について、遺言書に具体的詳細に記載し、また廃除事由を証明できる資料(例えば、暴行によりケガをした場合には、暴行の具体的状況を記載した書類や、医師の診断書など)を遺言書に添付しておいたり、証人になってもらえるよう親族などに依頼しておくべきです。また、欠格と同様に、廃除の効果も相対的であるため、被相続人との関係においてのみ相続権を失うにすぎません。例えば、父によって廃除された子も、母や自分の子の相続人になることが可能です。

相続欠格にあたるのかどうか、廃除できるのかどうかは、簡単にわかるものではありません。
自分や他の相続人の行為が相続欠格に該当するのかどうか気になる方、遺言書を書いたとしても相続人が遺留分を主張するのは許せないとお考えの方は、半田みなと法律事務所にご相談ください。