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クラウド・ファンディング
字義どおり、クラウド(大衆)からのファンディング(資金調達)をいい、大衆にとっては資金運用の一手法として、事業者にとっては比較的簡便な資金調達方法として利用が増加しています。法律上は、投資型(株式型・ファンド型)、売買型(購入型)、貸付型、寄付型に分類されます。クラウド・ファンディングは資金調達のための行為であり、金融商品取引法その他金融関連の規制の対象となります。資金提供者(大衆)及び資金調達者(事業者)に加えて、両者を仲介するサービス事業者が、クラウド・ファンディングの実務では重要な役割を果たしています。また、資金提供者にどのような税金がかかるか、採用し得る税制優遇があるかなどを把握するとよいでしょう。
投資型(株式型)
投資型のクラウド・ファンディングにおいて、資金提供者は、資金調達者である事業者が行う事業から生ずる収益の分配を受けます。投資型(株式型)は、資金提供者に事業者の発行する株式を与える場合のクラウド・ファンディングをいいます。
法規制と税制
まずは、会社法に従い、株式の発行の手続きを履践する必要があります。株主総会の特別決議で募集事項を決定し、資金提供者たる大衆に対して募集事項をインターネット上で通知し、引受けの申込みをしてきた大衆の中から募集株式の割当てを受ける者・割り当てる株式数を定め、大衆からの出資の履行を受けた後、増資等の登記を行います。
金融商品取引法においては、株式を購入するよう勧誘する行為は多数の者に対して行うなどの場合は「有価証券の募集」に該当し、募集に関する事項や会社に関する事項等を記載した有価証券届出書の提出や目論見書の作成が必要となります。また、第三者が発行者のために株式の取得勧誘を行うのは「有価証券の募集の取扱い」等として金融商品取引業の行為の一環に該当するため、第一種金融商品取引業の登録を得なければなりません。
資金提供者は、株式保有によって得られる配当金や第三者が発行者のために株式の取得勧誘を行うのは「有価証券の募集の取扱い」等として金融商品取引業の行為の一環に該当するため、第一種金融商品取引業の登録を得なければなりません。株式譲渡によって実現した差益について所得税や法人税の課税を受けることになります。また、個人投資家によるベンチャー企業への投資を促進するためのエンジェル税制といわれる税制優遇措置もあります。
投資型(ファンド型)
投資型(ファンド型)は、株式の発行と引受ではなく、出資契約の形式によって資金の提供と事業から生ずる分配を約する方法のクラウド・ファンディングをいいます。
法規制と税制
資金提供者は匿名組合契約等の出資契約によって収益分配を受ける権利を取得するが、これは金融商品取引法上、集団投資スキーム持分として「みなし有価証券」に該当します。集団投資スキーム持分の取得勧誘を行うことは、有価証券の募集又は私募として金融商品取引業の行為の一環に該当するので、第二種金融商品取引業の登録を得なければなりません。また、第三者が発行者のために株式の取得勧誘を行うことも「有価証券の募集の取扱い」等として金融商品取引に該当するため、第二種金融商品取引業の登録を得なければなりません。
投資型(株式型)と同様に、資金提供者は、匿名組合契約に基づく分配金や、譲渡によって実現した差益について所得税や法人税の課税を受けることとなります。また、投資型(ファンド型)のうち、特に匿名組合契約の構成によるクラウド・ファンディングの場合は、エンジェル税制の適用はありません。
売買型(購入型)
売買型(購入型)では、資金提供者には、資金提供の見返りとして事業者の行う事業上の物品やサービスが与えられます。しかし、所定の物品やサービスが与えられるのみであり、資金提供者にとって期待できるリターンには限度があります。
法規制と税制
物品・サービスの売買を行うもので、有価証券その他金融商品の販売を行うものではないので、投資型のように金融業規制の適用を受けるものではありません。しかし、資金調達者の事業から生ずる物品やサービスをインターネットで販売することになるので「通信販売」に該当し、特定商取引法を遵守することが必要となります。広告にあたって所定の事項を表示すべき旨や誇大広告をしてはならない旨などが義務付けられています。これは、資金提供者である大衆と資金調達者である事業者をつなぐ仲介者としてサービス事業者が介在する場合であっても、直接的には、物品やサービスを提供することになる事業者自身に対して課せられることになるため注意が必要です。
資金提供の見返りとして資金調達者側から資金提供者側に提供される物品やサービスが、提供を受ける資金に対して安価なものであった場合、税務上は贈与と認定されるリスクがあり、認定された場合、資金調達者はその分の贈与税や法人税を課税されることになります。
貸付型
資金提供者から資金調達者に対して貸付の形式で資金を提供することを指し、所定の利率で計算される利息を受け取れるものの、売買型(購入型)と同様に期待できるリターンには限度があります。
法規制と税制
資金提供者である大衆は直接の貸主にはなれず、仲介者であるサービス事業者が貸金業登録を有し、直接の貸主となり、仲介者には、貸金条件の掲示や、広告における必要事項の表示、契約書面の交付など、貸金業者に対する行為規制が適用されます。また、集団投資スキームとして「みなし有価証券」に該当するため、投資型(ファンド型)と同様の法規制が適用されることになります。
資金提供者は、匿名組合に基づく分配金について所得税や法人税の課税を受け、資金提供者は、貸付人とはならず、分配金として受け取るため、雑書所得として扱われ、利子所得とはなりません。
寄付型
寄付型では、資金提供者に何らかのリターンを与えることは想定されておらず、資金提供者との間に対価性はありません。
法規制と税制
寄付型のクラウド・ファンディングで行われるのは、資金提供者と資金調達者の間の贈与行為と仲介者によるその媒介であり、直接の規制はありません。
資金調達者は資金提供者から贈与を受けていることになるので、資金調達者が個人であれば暦年で110万円を超える資金提供を受ければ贈与税の対象となります。また、資金調達者が法人であれば、調達した資金を受贈益として法人税を課されます。
半田みなと法律事務所では、今後クラウドファンディングをお考えの方へ、迅速かつ適切に法的制度を整えていくためのアドバイスをさせていただいております。お気軽にご相談ください。
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