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2021.02.27 企業法務

残業代請求への対応

残業代請求への対応

従業員から残業代請求をされた場合に、会社の対応(反論)として、次の対応が考えられます。

  • 労働時間の認識が異なり、残業代が発生していない
  • みなし割増賃金制などにより、残業代が発生していない
  • 管理監督者にあたり、残業代が発生していない
  • 時効が成立している

それぞれについて、検討します。

労働時間の算定

労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。労働時間該当性は、使用者の指揮命令下に置かれているか否かにより定まり、労働契約等の定めにより決定されるものではないとされています。

指示していないのに残業をしたと主張された場合

労働時間に該当するか否かは、客観的に見て使用者の指揮命令下に置かれていると評価されるかどうかにより定まり、残業を指示した事実の有無に左右されるものではなく、残業を指示していなかったというだけでは、残業の労働時間該当性は否定されません。

自宅で作業していたと主張された場合

多くの家庭でインターネット環境が備わり、自宅にいながら仕事ができる環境が整ってきました。テレワークとして、使用者の指揮命令下に置かれている状況で仕事がなされていたとすれば、労働時間に該当します。テレワークではなく、労働者が業務時間外に業務を持ち帰って自宅で仕事をするケースの場合、客観的に見て使用者の指揮命令下に置かれているとは評価しづらく、労働時間該当性は否定されるでしょう。これに対し、通常の勤務時間を超過して勤務しなければならないような状況であり、そうした事実を使用者が認識していたような場合は、その時間は労働時間として算定されます。

残業時間が自己申告で信用できない場合

労働時間の立証についてタイムカードが必須というわけではなく、業務日誌や業務週報の写し、個人的な日記のような客観的な資料によって作業に従事していた時刻を客観的に立証できるのであれば、当該時間は労働時間と判定されます。しかし、出退勤の時刻をメモしただけでは、資料としての客観性がないので、労働時間該当性が認められない可能性が高いでしょう。

みなし割増賃金制などにより、残業代が発生していない

みなし割増賃金制

労働基準法に定める計算方法による時間外手当を支払う代わりに、別の方法(年俸制、定額残業代制など)による手当を支給する扱いとされていることがあります。みなし割増賃金制と呼ばれる、特定の定額の手当が支払われている場合や、基本給に時間外手当が組み込まれている場合があります。基本給とは別に特定の定額の手当を支払う場合であっても、基本給に時間外手当を組み込む場合であっても、基本給と割増賃金部分とが明確に区分されていることが必要で、割増賃金部分をどの程度明確に区分すればよいのかについても、使用者としては、労働基準法所定の計算方法を採用しない場合には、慎重な考慮が求められます。

管理監督者にあたり、残業代が発生していない

管理監督者

労働基準法41条で、監督若しくは管理の地位にある者については、労働時間、休憩及び休日に関する規定が適用されないとされています。
「監督若しくは管理の地位にある者」とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場である者をいいます。管理監督者については、名称にとらわれず、労働条件の決定その他労務管理について一体的立場にあるか否かを実態に即して判断すべきであり、管理職手当等の特別手当によりその地位にふさわしい待遇が与えられることも判断の基準となるとされています。管理監督者の労働時間・休憩・休日の規定の適用が除外される理由は、自らの労働時間を自らの裁量で律することができ、地位に応じた高い待遇を受けることから、労働時間の規制を適用するのが不適当とされるからです。

会社で、管理職の地位にある従業員が必ず管理監督者となるわけではないので注意が必要です。

時効が成立している

時効が成立している2020年3月31日以前については、残業代請求権の時効は2年間でした。2020年4月1日施行の改正民法の影響で、2020年4月1日以降は、残業代請求権の時効は3年間となりました。2020年3月31日以前に支払うべきであった賃金請求権には、改正前の時効「2年間」が適用されます。

従業員から残業代請求をされた場合の対応について、概略的ではありますが、検討しました。従業員からの残業代請求が認められるかどうかや対応方法について、詳しくは、半田みなと法律事務所にお気軽にご相談ください。