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2021.04.19 交通事故・労災労働問題(法人)

従業員が起こした交通事故

従業員が起こした交通事故

従業員が起こした交通事故

従業員が会社の車で事故を起こした場合の民事上の責任については、「運行供用者責任」と「使用者責任」が問題となります。「運行供用者責任」は、自賠法上の「運行供用者」に該当した場合に、交通事故の被害者の人身損害について、責任を負います。「使用者責任」は、従業員が業務中などに起こした事故について、使用者(会社)が従業員とともに損害賠償義務を負うものです。法律上は、会社が従業員の選任・監督について相当の注意をした場合、または、相当の注意をしても損害の発生を避けられなかった場合には、会社は責任を負わないことになっていますが、実際には、会社が使用者責任を免れることは難しい実態があります。使用者責任は、人身損害だけでなく、自動車の修理代などの物的な損害についても損害賠償義務を負います。

運行供用者責任と使用者責任のいずれの責任も、従業員が会社から指示された業務中に発生した事故であれば、原則として会社に責任がありますが、問題となるのは、従業員が会社に無断で、あるいは会社の内規に反して自動車を持ち出して起こした場合です。

会社は、事故を起こした車の運行支配と運行利益があるとされた場合には、その事故による被害者に対して、人身損害について運行供用者責任を負います。

社用車の無断運転による事故

業務で会社の自動車を使用していた農協職員が終業後に上司に無断でカギを持ち出して私用運転中に起こした事故について、①車の所有者(農協)と運転手の間の雇用など密接な関係があり、②日常の自動車の運転状況、③日常の自動車の管理状況から、所有者のためにする運行と認められる場合には、所有者に運行供用責任が認められる、とされた裁判例があります。また、私用運転を禁止していた営業および通勤のために従業員に使用させていた会社の車を、従業員が私用のスキー旅行に利用して起こした事故について、私用運転を確実にさせないための何らかの措置をしていなかったとして、会社の運行供用者責任を認めたものもあります。そのため、責任を争う会社は、無断(私用)運転だったことだけでなく、従業員の日常業務が車の運転と無関係であることや、無断使用等を禁止し、それを許さない措置を講じていた等、自動車に対する管理を尽くしていたことの主張立証を積極的に行うことが必要です。

マイカー使用中の事故

会社は従業員が所有する自動車保有者ではありませんから、通常は運行利益も運行支配も認められず、運行供用者となることはありません。したがって、従業員にマイカーを通勤や会社の業務に使用することを禁止し、現にその使用を許していなかった場合は、会社が運行供用者責任を負うことは原則としてありません。これに対して、会社が従業員のマイカーを会社の業務に使用させていた場合の業務中の事故や、マイカー通勤を認めていた場合の通勤中の事故についいぇは、会社に運行利益と運行支配が認められますから、原則として運行供用者責任を負います。裁判例には、会社が通勤や工事現場への往復にマイカーを利用することを認めてガソリン手当等を支給していた場合に、帰宅途中に起こした事故について会社の運行利益と運行支配があるとしたものや、作業の為にダンプカーを持ち込んで雇われていた従業員が、勤務時間外に私用運転中に起こした事故について、燃料を会社が提供していたことやダンプカーを構内に保管していたこと等から会社の運行利益と運行支配があるものとしたものがあります。

問題となるのは、マイカー通勤等が禁止されていた場合に、会社が責任を負うのはどのような場面かですが、裁判例は、会社と従業員との関係、当該車の使用状況や管理状況から運行利益と運行支配を判断しています。例えば、マイカー通勤が禁止されている会社の従業員がマイカーで工事現場から寮に帰る途中に起こした事故について、会社はときに運転者が寮からマイカーで通勤していることを黙認して事実上利益を得ており、かつ会社の寮に住まわせて会社の社屋に隣接する駐車場も利用させていたから、その車の運行につき直接または間接に指揮監督をなし得る地位にあったとして会社の運行供用者責任を認めたものがあります。一方で、会社にマイカー通勤に関する規則はあったが会社に対する申請をしたことも会社から許可を受けたこともない従業員が、マイカー通勤中に起こした事故について、正規の手続きを経てマイカー通勤を許可していたことも積極的に業務に利用していたこともなく、従業員が自己の便宜のためにマイカー通勤を選択したこと、事故当時の運転は業務との関連性もなく単に帰宅のためになされたに過ぎないことから、会社の運行利益と運行支配を否定したものもあります。

従業員が交通事故を起こした場合、会社が責任を負うかどうかについて、不明なこともあるかと思います。半田みなと法律事務所にお気軽にご相談ください。