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2023.02.22 交通事故・労災

労務災害の基本知識

労務災害の基本知識

今回のコラムでは、労働災害の基礎知識についてお伝えいたします。

労働災害とは

労働災害とは一般的に「労災」と呼ばれ、労働者が会社で業務中に病気やケガをした場合や死亡した場合、また、通勤・退勤途中に交通事故などでケガをした場合のことを指します。労働安全衛生法第2条では、労働災害を「労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいう」と定めています。また、職場での過重負荷による過労死や、セクハラ・パワハラなどの心理的負荷による過労自殺も労働災害と判断される場合があります。

正社員やアルバイト・パート・派遣といった雇用形態及び年齢や性別、国籍に関わらず、一部例外を除いたすべての労働者が労災の対象です。労働災害が起きた場合、労働者は「労働者災害補償保険法(労災保険法)」によって、負傷した場合の療養費や休業補償などの給付を受けることができます。給付を受けるためには、労災申請を行い、労災認定を受けることが必要となります。一方、労働者を雇用している企業は、業務上の事故や災害に遭った従業員を守る観点から、原則として労災保険の加入と保険料の納付が義務付けられています。また、事業主には労働災害を防止する義務があり、不幸にも労働災害が発生し、労働者が死亡または休業した場合は、労働基準監督署に報告しなければなりません。

 労働災害の種類

労働災害は、「業務災害」と「通勤災害」の2つに分けられます。いずれも労災保険によって通院費用や生活費の補償を受けることができます。

業務災害

業務災害とは、業務中の事由による労働者の負傷、疾病、障害または死亡をいいます。あくまで業務中による事故が対象であり、ケガを負った労働者の事故原因が「業務上」であると認定されることが必要となります。「業務上」といえるかについては、①業務遂行性と②業務起因性という2つの要件から判断されます。

①業務遂行性

業務遂行性とは、労働契約に基づいて労働者が事業主の支配下にある状態で起きた災害であるかどうかを指します。正社員だけでなくパートタイマーやアルバイトなど賃金が支払われている者すべてが対象となり、オフィス内はもちろんのこと、たとえば在宅勤務中であっても、勤務時間中に生じた負傷・疾病などであれば、基本的には業務遂行性が認められます。また、取引先との打ち合わせのため外出または出張をしている場合や、運送業者のように外へ出て配送業務を行っている場合も、事業主の管理下から離れて仕事をしている状態ではあるが、事業主の支配下から外れていることにはならないため、業務遂行性は認められると考えられます。

②業務起因性

業務起因性とは、業務が原因で発生した病気やケガであるかどうかを指します。例えば同僚との私的なケンカや休憩中にふざけていて負傷したなど、仕事とは全く関係がない原因によって負傷や疾病が生じた場合には、業務起因性が否定されます。業務起因性の判断が困難になるケースも多く、過労死や過労自殺、うつ病など、精神障害や脳・心臓疾患については、この業務起因性が問題とされています。
業務災害の認定には、上記の業務遂行性と業務起因性の両方の基準を満たさなければなりません。つまり、仕事中の業務が原因で起きた事故の場合、業務状況とケガの間に相当の因果関係があることが必要となります。たとえ勤務時間内であっても業務に関係のない、私的な行動による事故やケガは対象にならないので注意しましょう。

通勤災害

通勤災害とは、労働者が通勤途中に被った負傷、疾病、障害または死亡をいいます。労働者が通勤で自宅と会社を往復している際、「通勤途中に電車と接触事故を起こして大ケガをした」「自動車で職場に向かっている途中に接触事故を起こしケガをした」といった事故が該当します。
通勤災害と認められるためには、「通勤中」といえるかがポイントとなり、移動経路が大きく関わってきます。通勤とは、「就業に関し、住居と就業の場所との間を往復すること」をいい、その通勤が「合理的な経路 および方法」であり、「業務の性質を有するものを除く」ことになっています。また、「逸脱・中断」があった場合には、その逸脱・中断の間とその後は通勤とは認められません。
ただし、通勤途中に自動販売機で飲み物を買った、仕事帰りに保育園に子どもを迎えに行った、病院やクリーニング屋へ寄ったなど、日常的な行為において事故でケガをした場合、通勤の中断・逸脱にはならず、「通勤中」に判断されると考えられます。一方、仕事帰りにスポーツ観戦や友人との飲み会など、業務に関係のない寄り道によって通勤経路を大きく逸脱し、そこで事故に遭ってケガをした場合は、通勤災害と認められないので注意しましょう。

労災保険給付の種類

労災と認められた場合、状況に応じてさまざまな補償を受けることができます。労災保険で受けられる給付には次のようなものがあります

療養(補償)給付

病気やケガをして療養が必要となった場合に受けることができる補償です。治療費や入院費などの実費相当額が補償され、病気やケガが治癒するまでの治療費が対象となります。診察、薬剤・治療材料の支給、処置・手術その他の治療、居宅における看護、病院などへの入院・看護などの療養の給付が受けられます。

休業(補償)給付

仕事や通勤が原因で受けた病気やケガで、労働者が働くことができなくなった時に受けることができる補償です。休業してから4日目以降より平均賃金の計60%(特別支給金20%もあわせると80%)が補償されます。休業3日目までについては、事業主が休業中の所得を補償します。

障害(補償)給付

病気やケガが完治せずに後遺障害が残った場合に受け取ることが可能な補償です。障害補償年金または障害補償一時金が給付されます。障害の等級ごとに給付金額が決められており、認定される障害等級(1級から14級)に応じて補償金が支給されます。

傷病(補償)年金

病気やケガの治療を開始してから1年6カ月を経過しても治らない、もしくは一定の障害が残っている場合に、受けることが可能な給付です。傷病の等級は1級から3級まであり、症状の程度に応じて金額が定められています。

遺族(補償)給付

仕事や通勤が原因で受けた病気やケガで労働者が死亡した場合、その遺族が受け取ることができる補償です。遺族(補償)給付には、遺族補償年金と遺族補償一時金の2種類があり、残された遺族に対して生活保障の目的で給付されます。遺族補償年金を受け取ることができる遺族とは、労働者の死亡当時その収入で生計を維持していた配偶者、子、父母、孫、 祖父母、兄弟姉妹です。また、給付金額は、亡くなった労働者との続柄、遺族の数などによって異なります。

葬祭料・葬祭給付料

労働者が死亡した場合、葬儀費用を補てんする目的で給付されます。葬祭を行った者に315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額、または、給付基礎日額の60日分の額のいずれか金額の高い方が支給されます。また、葬祭料の請求期限は、被災した労働者の死亡から2年以内と定められており、これを超えた場合は、請求権は消滅してしまうので注意してください。

介護(補償)給付

障害(補償)年金または傷病(補償)年金受給者のうち、第1級もしくは第2級の者で、現に介護を受けている者に対して給付される補償です。

労災に強い弁護士、半田みなと法律事務所では労務災害についてのご相談を初回60分無料でお受けしております。弁護士費用の着手金は無料です。
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