お知らせ・コラム
Columnカテゴリ
Category変形労働時間制
変形労働時間とは
変形労働時間制とは、労基法32条が定める1日及び1週の労働時間の上限を、ある特定の1日ないし1週において超えることがあっても、一定期間において平均して週の法定労働時間を超えなければ、労基法32条違反とならないことを定める制度です。例えば、ある特定の日の予め定められた労働時間が1日10時間とされ、かつ、実際の労働時間が10時間に及んだ場合であっても、この制度が認められていれば、使用者はこの日の1日の法定労働時間を超える時間外労働について割増賃金に支払義務を負わないこととなります。なお、変形労働時間制下でも、休日労働規制や深夜労働規制は免れないので、これらの割増賃金は支払う必要があります。
この制度は、交代制労働を採用したり、業務に繫閑の波があったりする業種において、必要に応じて労働時間の長短を調整できるようにすることで、使用者による労働時間調整を容易にすることができる一方、平均した週の労働時間を法定労働時間以下に抑えることで、労働者の総実務労働時間の短縮を図る趣旨で導入されたものです。現行の労基法では、1か月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制、及び1週単位の変形労働時間制の3種を設けています。
1か月単位の変形労働時間制
1か月単位の変形労働時間制の適用が認められるためには、過半数代表との書面による協定、就業規則又は就業規則に準ずるものにおいて、変形労働時間制の実施を定め、変形期間の起算日を明示することが求められています。また、変形労働時間制は、変形期間中の週平均労働時間が法定労働時間の範囲内でなければなりません。そのため、変形期間が4週単位である場合、その4週の労働時間の総枠が160時間以内と定められていなければなりません。
労働時間の特定は、就業規則においてできる限り具体的に特定すべきものでありますが、業務の実態から月ごとに勤務割を作成する必要がある場合には、就業規則において各直勤務の始業・終業時刻及び各直勤務の組み合わせの考え方、勤務割表の作成手続きや周知方法などを定め、各日の勤務割はそれに従って変形期間開始前までに具体的に特定しておけば足りるとしています。
1か月単位の変形労働時間制の適用が認められる場合の時間外労働となる時間について、行政解釈は以下のような基準を示しています。(下記の1年単位の変形労働時間制の場合も同様)
- あらかじめ法定労働時間を超えて労働させる旨を定めた日や週においては、その定めた労働時間を超えて労働した時間が割増賃金請求の対象となる時間外労働となる。
- そのような定めをしていない日や週においては、日や週の「法定」労働時間を超えて労働させた時間が時間外労働となる。
- 変形期間における法定労働時間の総枠を超えて労働させた時間(①②の時間外労働時間数を除く)も時間外労働となる。
1年単位の変形労働時間制
1年単位の変形労働時間制を実施するためには、労使協定を書面で作成し、これを締結する必要があります。この労使協定においては以下の5つのことについて定めておかなければなりません。
対象労働者の範囲
対象労働者に関する法律上の制限はありませんが、その範囲は労使協定おいてできる限り明確に定められる必要があります。対象となる労働社員は、変形労働時間制の対象期間を通じて勤務することが予定されている者だけでなく、対象期間の途中から採用された者や途中での退職者等の対象期間より短い期間しか労働しない労働者も含めることができます。
対象期間
対象期間は、1か月を超える1年以内の期間に限られます。なお、起算日を特定する必要があるのは他の変形労働時間制と同様です。
特定期間
特定期間とは、対象期間中の特に繁忙な期間をいいます。特定期間は定めなくてもよく、一つの対象期間中に複数の特定期間を定めることも可能です。
労働日及び労働日ごとの労働時間の特定
1年単位の変形労働時間制では、対象期間が長期に渡ることが見込まれ、あらかじめこれらを特定することが困難であることから、対象期間を1か月以上の期間で区別する場合、その最初の期間のみ労働日と各日の所定労働時間を労使協定で特定し、その他の期間については各期間における労働日数と総労働時間を定めることで足りるとしています。
対象期間中の労働時間
平均して1週間当たり40時間以内にしなければならず、対象期間が3か月を超える場合は、対象期間内の所定労働日数は原則として1年当たり280日が上限となります。また、対象期間中の1日の労働時間は10時間、1週間の労働時間は52時間がそれぞれの限度とされています。対象期間が3か月を超える場合は、労働時間が48時間を超える週が連続するのを3週までとし、対象期間の最初から3か月ことに区分した各期間において労働時間が48時間を超える週を3週までとする制限が加えられます。
労使協定の有効期限
有効期間については特に制限はないが、通達では1年程度とすることが望ましいとされていますが、3年程度以内のものであれば労基署長は受理して差し支えないものとされています。
1年単位の変形労働時間制は、1か月単位の変形労働時間制と比較して労働者への影響が大きいことから、対象期間の途中でいったん特定された労働日や週の労働時間を変更することは許されないとされています。また、1年単位の変形労働時間制において割増賃金支払義務が生じる時間外労働となるのは、上記の1か月単位の変形労働時間制と同様です。
お悩みの方は、半田みなと法律事務所へご相談ください。労働災害関係のご相談は無料です。