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Category社会福祉施設での労災事故
厚生労働省の令和5年の労働災害発生状況によれば、社会福祉施設での死傷者数は、14,049人で、前年比で1,269人(9.9%)の増加となっています。また、事故の型では「動作の反動・無理な動作」が最も多く(34.7%)、これに「転倒」(34.0%)が続きます。
介護や障がい者施設は、身体的に負担の伴う作業がありますし、労働者の高齢化も進んでいることから、他の業界よりも労働災害が発生しやすい職種であるといえます
労災の具体例
腰痛
上記のように、社会福祉施設における労働災害のうち、最も大きな割合を占めたのは、「動作の反動・無理な動作」によるものであり、この中でも最も典型的なのは、介助作業中に腰に無理な力が加わることによって発生する「腰痛」です。介護現場では、施設利用者を抱きかかえる時などに、「動作の反動や無理な動作」によって腰痛が引き起こされるケースが少なくありません。
そのほか、自分より体重の重い施設利用者を支えようとして倒れたり、利用者が転びそうになったところをとっさに助けようとして自らが犠牲になるケースも多いようです。
転倒
次に多いのが「転倒」による労働災害です。階段や段差につまずいたり、濡れたフロアで靴が滑る等の原因が考えられます。また、職場が整理整頓されておらず、床の上にある物につまずく場合もあります。人手不足もあってどうしても急いでしまい廊下を走って転倒する、両手に荷物を抱えたまま移動し足を踏み外すという事故も典型的です。
障がい者施設における職員への暴力
障害者施設においても、職員が入居者から暴力を受けるケースは多くあります。
特に精神的な障害や行動障害を持つ入居者がいる場合、予期しない攻撃や行動によって職員が怪我を負うことも珍しくありません。これには、突然のつかみかかり、押し倒し、物を投げられるなど、介護者の安全を脅かす行為も含まれます。
また、こうした暴力は、物理的な怪我だけでなく、精神的なストレスを引き起こす要因にもなります。介護職員は、こうした状況でも冷静に対応しなければならないというプレッシャーの中で働いており、精神的な負担も無視できません。これらの暴力により、心身に影響が出た場合でも、業務中に発生した事故や障害であれば労災が適用される可能性があります。
労災保険の給付だけでは不十分?
労災保険による給付は、治療費や収入の減収分の補償など多岐にわたります。労災による怪我でもらえる労災給付の主な内訳は以下の通りです。療養補償給付
休業補償給付
障害補償給付
傷病補償年金
介護補償給付
など一見、補償としては十分であるように思えますが、労災保険だけで被った損害すべてが補償されるとは限りません。
例えば、施設の安全配慮義務違反がある場合です。
従業員を雇う会社には、従業員が快適に働ける環境を整えて、安全と健康を確保しなければならないという「安全配慮義務」を負っています。利用者から暴力を受けて損害を被った場合は、その利用者に対して損害賠償を求めるのが原則です。
もっとも、利用者が暴れまわる傾向にあるのを介護施設が把握していたにもかかわらず、職員間でその情報の共有が徹底されていなかった、職員一人だけで対応させていたなどの場合は、会社に安全配慮義務違反があると判断される可能性があります。安全配慮義務違反によって起こった出来事なのであれば、会社に対して損害賠償請求できる可能性があります。
また、利用者からの暴力という労災である場合なら、精神的な苦痛を味わうでしょう。このような精神的苦痛に対する補償として「慰謝料」という補償を労働者は受けられるのですが、労災保険から慰謝料は給付されません。
このように、労災保険の給付だけでは足りない損害の部分については、損害賠償請求によって補償が受けられないか検討する必要があるでしょう。
弁護士にご相談を
労災事故に遭った場合、被害者である職員は適切な補償を受ける権利があります。
一方で、労災が隠蔽されている場合や、会社に責任があるにもかかわらず会社から損害の賠償を受けていないことも多くあります。また、後遺障害が残った場合、十分な補償を受けるためには、適切な後遺障害等級の認定がされることも必要です。
適切な補償を受けるために、ぜひお気軽に弁護士にご相談下さい。初回無料法律相談ございます。