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親権とは
親権とは、未成年の子を健全な一人前の社会人として育成すべく養育保護する職分であり、そのために親に認められた特殊な法的地位といわれています。親権は、①身上監護権、②財産管理権および③子の身分行為に関する法定代理権に分けられ、これらの権利すべてをまとめて親権といいます。民法820条では、「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」と定めています。ひとりでは社会生活を送ることが困難な未成熟児を保護し、その健全な肉体的・精神的成長を図るという子の福祉の観点からは、親権者に課される義務でもあります。
身上監護権(監護権)
子の利益のために子を監護教育する権利で、日常生活全般において子と同居し、子の身の回りの世話やしつけ、教育をする権利です。
財産管理権
子名義の財産を包括的に管理する権利をいいます。子の財産を保護することを目的とし、財産の管理や子に代わってその財産に関する法律行為(契約など)をする代理権および同意権が与えられています。
子の身分行為に関する法定代理権
親権者は、認知の訴えの提起や15歳未満の子による養子縁組に関する承諾などを子に代わって行うことができます。
親権はどこに帰属するのか
婚姻中の父母は、共同して子の親権者になります(共同親権)。しかし、未成年の子がいる父母が離婚する場合には、父母のいずれか一方のみを親権者として決めなければなりません(単独親権)。これは、日本では離婚後の親権について共同親権を認めていないためです。また、子が生まれる前に離婚した場合は、母親が親権者になるのが原則ですが、父母の協議によって父親を親権者として定めることもできます。
子の親権者となった一方の親には、原則として子の身上監護権・財産管理権の両方が帰属することになり、親権者となった親は、法律上でも実生活上でも将来にわたり子との結びつきが極めて強くなります。そのため、親権については、その帰属をめぐって真っ向から対立することも少なくありません。親権者をどちらにするか決まらず、協議離婚が成立しない場合には、親権を決めるため家庭裁判所に離婚の調停を申し立てることになります。
子の利益と福祉のため
一般的に「子は母親が引き取って育てるのが最善」といわれるように、母親が親権者や監護者になる場合が非常に多くみられます。実際に子の世話をしたり、子の教育環境を整えたりするなどの点から検討した結果、「母親と一緒にいる方が、子にとっては生活しやすい環境である」と判断されることが多いからです。これは「父親が親権者としてふさわしくない」ということでは決してありません。特に子が義務教育に達していない幼児の場合は、そのように判断さることが多いようです。
親権者をどちらにするべきかを決定する審判や離婚訴訟では、家庭裁判所の調査官が、子をめぐる家庭環境や当事者である父母について調査を行い、親権者としてどちらがふさわしいかを検討します。親権は子の保護を目的とする制度であり、経済的に余裕がある方が有利であるとか、仕事の職種によって不利になることは、一概には言うことはできず、子の利益や福祉を十分に考慮した上で親権者が決められます。